2024/10/04 21:10

はじめに:モリンガが変える地方の未来

近年、日本全国で地方創生が叫ばれる中、兵庫県上郡町で進められている独自の取り組みが注目を集めています。その主役は、「奇跡の木」とも呼ばれる熱帯原産の植物、モリンガです。栄養豊富なスーパーフードとして世界中で注目されているモリンガを活用し、町おこしを図る上郡町の挑戦が、今、実を結び始めています。

神戸新聞の記事によると、上郡町の住民らが昨年開業した「カフェ・モリンガの里」が1周年を迎えたとのことです。この記事を踏まえ、モリンガを活用した町おこしの可能性や、その影響について考察していきたいと思います。

モリンガとは:驚異の栄養価と環境貢献

スーパーフードとしてのモリンガ

モリンガは、その驚異的な栄養価から「奇跡の木」と呼ばれています。葉にはビタミンや鉄分、食物繊維などが豊富に含まれており、一般的な野菜と比較してもその栄養価は群を抜いています。例えば、モリンガの葉に含まれるビタミンCはオレンジの7倍、カルシウムは牛乳の4倍、カリウムはバナナの3倍もあるといわれています。

環境改善効果

栄養価だけでなく、モリンガは環境面でも注目を集めています。二酸化炭素の吸収率が高いため、地球温暖化対策としての効果も期待されています。成長が早く、乾燥に強い特性から、砂漠化防止にも活用されている事例があります。

上郡町の挑戦:「カフェ・モリンガの里」の誕生

地域住民主導の取り組み

上郡町でのモリンガを活用した町おこしは、地元で料理教室を主宰する肥岡紀子さん(72)の呼びかけから始まりました。地元住民で構成される「交流広場『たかた』協議会」が中心となり、2022年6月、旧高田幼稚園舎を改装して「カフェ・モリンガの里」をオープンさせました。

カフェの特徴と人気メニュー

カフェは毎週金曜日から日曜日まで営業しており、モリンガを使った様々なメニューを提供しています。人気の商品には以下のようなものがあります:

  1. モリンガ粉末入りパンのサンドイッチ
  2. 地元野菜のサラダ
  3. モリンガ入りシフォンケーキ
  4. モリンガヨーグルト

これらのメニューは、モーニングセットやケーキセットとして500円で提供されており、地元住民を中心に大変好評を博しています。また、毎月第3土曜日には予約制でバイキングも実施しており、より多くのモリンガ料理を楽しめる機会を設けています。

観光客の増加

「カフェ・モリンガの里」の評判は地元にとどまらず、県外からもバスで団体客が訪れるほどの人気スポットとなっています。これは、モリンガという珍しい食材への興味だけでなく、地域の人々が心を込めて作り上げた空間や料理の魅力が、多くの人々の心を捉えているためでしょう。

モリンガ活用の広がり:商品開発と地域連携

多様な商品展開

「カフェ・モリンガの里」は、カフェメニューにとどまらず、様々なモリンガ関連商品を開発・販売しています。その一部を紹介します:

  1. モリンガ粉末:最も基本的な商品で、料理や飲み物に加えて使用できます。
  2. モリンガの苗木:家庭でモリンガを栽培したい人向けに販売しています。
  3. モリンガ味の塩味饅頭:赤穂市の菓子会社と共同開発した商品です。
  4. モリンガ入り上生菓子:日本の伝統的な和菓子にモリンガを取り入れました。
  5. モリンガジェラート:イタリアの伝統的なアイスクリームにモリンガの風味を加えています。
  6. モリンガ入り焼き菓子:クッキーやパウンドケーキなど、様々な種類があります。
  7. モリンガスキンケアセット:美容効果も期待されるモリンガを使用したスキンケア商品です。
  8. モリンガ入りうどん:玄米、白米、モリンガの粉末を使用した新しいタイプのうどんです。

地域連携と産業振興

これらの商品開発は、単に「カフェ・モリンガの里」だけの取り組みではありません。地域の企業や職人との連携により実現しています。

  • 赤穂市の菓子会社との共同開発
  • 福島県の企業への委託製造
  • 相生市の草木染作家との協力

このように、モリンガを軸とした地域間、産業間の連携が生まれています。これは、モリンガという新しい素材が、既存の産業に新たな可能性をもたらしている証といえるでしょう。

ふるさと納税返礼品としての採用

開発されたモリンガ商品の中には、上郡町のふるさと納税の返礼品に選ばれているものもあります。これは、モリンガ商品が単なる地域の特産品を超えて、全国に誇れる商品として認められた証といえるでしょう。また、ふるさと納税を通じてモリンガ商品が全国に広まることで、上郡町の知名度向上にも貢献しています。

モリンガの新たな可能性:染色への挑戦

モリンガ染めの開発

「カフェ・モリンガの里」の取り組みは、食品や化粧品にとどまりません。最近では、モリンガを使用した染色にも挑戦しています。相生市の草木染作家に依頼し、モリンガを使用した染色技術を開発しました。

ユニークな色合い

モリンガ染めで得られる色は、黄土色やカーキ色など独特の色合いが特徴です。これらの色は、自然由来の優しい色合いとして、衣料品や工芸品に新たな魅力を加えることが期待されています。

体験型観光への展開

モリンガ染めの技術を活かし、染色教室の開催も計画されています。これは、モリンガを通じた新たな体験型観光の可能性を示唆しています。観光客が単にモリンガ製品を購入するだけでなく、モリンガを使った染色体験をすることで、より深くモリンガと上郡町の魅力を感じることができるでしょう。

1周年を迎えて:成果と今後の展望

地域の支援と協力

「カフェ・モリンガの里」が1周年を迎えられたのは、地域の人々の支援と協力があってこそです。肥岡さんは「地域の人らが野菜を提供してくれたり、人や企業を紹介してくれたり、多くの支援のおかげで1周年を迎えられた」と感謝の言葉を述べています。

今後の展望

1周年を迎え、「カフェ・モリンガの里」の取り組みは新たな段階に入ります。肥岡さんは「今後もモリンガで上郡を盛り上げたい」と意気込んでいます。具体的には以下のような展開が期待されます:

  1. モリンガ商品のさらなる多様化
  2. モリンガ染めを使用した商品の開発と販売
  3. モリンガ栽培面積の拡大
  4. モリンガを活用した環境教育プログラムの開発
  5. モリンガツーリズムの確立

まとめ:モリンガが紡ぐ上郡町の未来

「カフェ・モリンガの里」の1年間の取り組みは、モリンガという一つの植物が、いかに多様な可能性を秘めているかを示しています。食品、化粧品、染色と、その活用範囲は広がり続けており、それに伴って地域経済や観光業にも良い影響をもたらしています。

しかし、この取り組みの真の価値は、モリンガという新しい素材を通じて、地域の人々が協力し、新しいことにチャレンジする姿勢を育んだことにあるのではないでしょうか。肥岡さんの言葉にあるように、多くの人々の支援と協力があってこその1周年です。

モリンガを通じて紡がれた人々のつながりと、新しいことへのチャレンジ精神。これこそが、上郡町の明るい未来を築く真の原動力となるでしょう。「奇跡の木」モリンガは、単なる栄養価の高い植物ではなく、地域の未来を変える可能性を秘めた「希望の種」なのかもしれません。

上郡町の挑戦は、まだ始まったばかりです。これからのモリンガを活用した町おこしの展開に、引き続き注目していく価値があるでしょう。